アコウダイ

日本固有種。体色は一様に橙色だが、成魚では墨と称される不定形、不定位置の黒斑(墨付き)を有する個体がある。目窩下縁に2棘(涙骨と第3眼下骨の下縁)を有し、背鰭13棘。尾鰭の後縁はややくぼむ。大型は80cm、7kg以上。腹膜は黒い。卵胎生で春先に常棲域よりもやや浅みに集結し仔魚を産出する。

「分類がややこしい高級魚」

関東の深海シーンでは現在も「銚子以南で釣れるのがアコウダイ、以北で釣れるのはメヌケ」の表現が使用されるが、標準和名「メヌケ」と言う魚は存在しない。
アコウダイとバラメヌケ
国内に棲息する標準和名に「メヌケ」の3文字を持つ魚はバラメヌケ、ヒレグロメヌケ、アラメヌケ、サンコウメヌケ(俗称ベニアコウ)、アラスカメヌケ、クロメヌケ(俗称アオゾイ)など。
また、アコウダイを含むこれらの魚は「釣り上げると体内のガスが膨張して眼球が突出。デメキンの如き外観となる事から「目抜け」。総称としてのメヌケ(類)と表現するケースもある。

アコウダイの兜煮

(以下、テル岡本氏解説)
銚子周辺で確認した「メヌケ」と呼ばれる個体は(同乗者釣果も含め)全て眼窩下縁に2棘を有す標準和名「アコウダイ」。
茨城県鹿島沖300m前後と同県平潟沖水深500m前後では本種と標準和名バラメヌケ(眼窩下縁無棘)の混棲が確認されたが、平潟沖200~300mの「小メヌケ」はアコウダイがメイン。「銚子以北がメヌケ」は、学術的には殆ど「間違い」である。但し、同属のウスメバルがそうであるように、同一魚種でも釣場により「別物」と認識せざるを得ない味覚差(脂肪の乗り)が生じるのは紛れもない事実。より脂の乗りが良い親潮海域の本種(をメインとした複数種)を「メヌケ」と称して黒潮海域の個体と区別したのなら、それはそれで「正解」とすべきだ。


アコウダイ以外の「メヌケ」と称される魚

①バラメヌケ
Sebastes baramenuke
分布:銚子以北~南千島
アコウダイ若魚と酷似するが、頭部背面に3条の暗色横帯、主鰓蓋骨に暗色斑を有す。眼窩下縁は無棘。背鰭は13棘。40cm程の小型種とされるが、茨城県の鹿島沖、平潟沖では60cm級を複数確認済み。

②ホウズキ
Hozukius emblemarius
分布:岩手県以南~九州
背鰭12棘、眼窩下縁に3棘、眼窩上後縁に数棘を有す。尾鰭の後縁はくぼまない。アコウダイよりも体色の紅が強く、釣り上げた直後、紅白の縞模様が出る個体も。白目部分が赤い。若魚はアコウダイ釣りにしばしばまじるが、成魚はやや深みに生息する傾向。
 海面に浮かんだ際はアコウダイよりも鮮やかな紅色。この点から本種成魚を「紅アコウ若魚」と勘違いするケースもあるようだ。成魚はアコウに比べて体表がザラ付く印象で、主鰓蓋骨の棘も大きい。
 関西地区ではアコウダイよりも数が多いとされる。

③アラメヌケ
Sebastes melanostictus
「汚いアコウが釣れた」は、たいてい本種。体背側に黒褐色斑と斑点、頭背面に3条の暗色横帯を有する。眼窩下縁に3~7棘。東京湾口、相模湾、南紀白浜沖でも個体確認。
研究により08年に学名がSebastes aleutianusから、Sebastes melanostictusに変更された。「アラメヌケ」の名がSebastes aleutianusの英名「Rough Eye Rockfish」の和訳「粗い眼の根魚」に基づく事から変更も検討されたが、混乱を防ぐ為に見送られた。

④ヒレグロメヌケ
Sebastes borealis
国内では1970年に岩手沖で初採集~新種報告。国内種としては最若&最大級のメヌケ。水深400~500mに棲み、アコウダイ釣りで混獲。シーズン1~2尾ながら相模湾からも十数kgが報告される。
07年、ベーリング海のタラトロール漁で漁獲された体長112cm、体重27kgは耳石調査により100歳以上と判定されたが、同海域では過去これ以上の大物も確認されている。
背鰭13棘。背面に不明瞭な暗色斑を有する。背鰭、腹鰭、臀鰭、尾鰭の後縁が黒く、眼窩下縁は無棘。

⑤アラスカメヌケ
Sebastes alutus
宮城県以北の水深150~300mに分布。40cm程度の小型種。下顎は上顎より前方に突出し、先端に小突起を有す。ベーリング海産は北大西洋産の近似種タイセイヨウアカウオ、オキアカウオと共に「アカウオ」の名で流通する。
※東北では「紅アコウ」ことオオサガ(&サンコウメヌケ)を「荒神メヌケ」と称すが、詳細は「ベニアコウ」項を参照の事。
<主な釣り方>
■エサ釣り(胴つき)
■ルアー(ジギング)

アコウダイの釣果写真

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