アブラボウズ

稚魚は流れ藻などに付いて表層生活をする。若魚は体側に不規則な白色斑を多数有すが、成長とともに消滅する。身肉には脂肪分を50%(普通の魚の10倍!)も含有する。故に一時に大量に摂取すると、胃腸の弱い人では下痢を起こす場合もある。この点を拡大解釈してバラムツやアブラソコムツと同様に「取引禁止の毒魚」の誤解が未だにあるが、バラムツ類の脂肪が人体で消化できないワックスなのに対し、本種の脂肪は食用に適したグリセライド。市場で普通に流通する魚だ。

「100kgを超える深海のモンスター」

水深300~1,000mのキンメ、アコウ、ベニアコウ釣りで姿を見せ、大型は100kg超。イシナギ、カンナギ(マハタ老成魚)と並ぶ、深海釣り最大のターゲット。水圧変化に対応し、水深1,000mから釣り上げても、浮かぶ事は無い。巻上時の抵抗が激しいのは中型まで。数十kg以上の大型はヒット直後の「一走り」と海底から引き剥がす際は根掛りさながらの強烈さだが、途中は案外大人しい個体が多い。海面で覚醒させると厄介なので取込みはスムーズ&スピーディーを心掛ける。

アブラボウズ 80kg

取り込みにはギャフを使用するが、口周りや表皮は意外に脆い。大口を開いて浮上してくるので、魚が暴れ出す前に口内にギャフを差し込み、喉、若しくは下顎センターに打ち、大物の場合は間髪入れずに更に1~2本打ち込み、船内に引きずり上げる。

関東ではクロウオ、若しくはクロイオの名が一般的。他に小田原周辺のオシツケ(女房言葉で「毒見」の隠語)、クロハタ(三崎周辺)沖アイナメ、又は沖アブラメ(東北)などの地方名あり。

神奈川県小田原周辺や三崎では以前から専門の漁が行われ、小田原周辺では生鮮や酢漬けに加工した物が「オシツケ」の名で、三崎では「マグロの粕漬け」などの名で加工品として「普通に」流通してきたが、近年は標準和名が使われる。食品名表示が厳しくなったのもあるが、回転寿司店の「アブラボウズ(又はオシツケ)の握り」が旅&グルメ番組で度々取り上げられた事で広くその名を知られ、市民権を得た格好だ。これに伴い各地の市場価格も以前より高値の傾向。10kg前後の小型が最も値が良く、kg当たり千数百円。数十kgの大型は扱い難さもあり値が下がるが、それでも800~1,000円近くは付ける。

比較的骨が柔らかく、数十kgの大物も出刃包丁1本で解体可能。生食は刺身、漬け、酢漬けなど。ギンダラの「兄弟分」であり、煮付け、照り焼き、西京漬けなどの調理も良い。
<主な釣り方>
■エサ釣り(胴つき)
■ルアー(ジギング)

アブラボウズの釣果写真

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