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深海釣りの魅力とは

優先順位はさておき「現在進行形」キーワードは4つ。

テル岡本 2016.06.20

①美味な高級魚


深海釣りターゲットは何れ劣らぬ美味揃い。グルメ番組で持てはやされ、「釣り物」と称される一本釣りされた魚には、こちらの目玉が飛び出しそうな高値が付く。そんな「超」の付く高級魚を何の躊躇も無く切り捌き、好みの調理法で味わい尽くす。これぞ深海釣師の冥利に尽きる。
超高級魚
「美味しく食べる」には過剰な数は必要ない。有り余る釣果は「飽き」や「鮮度劣化」など、魚を雑に扱いかねないからだ。

②魚のサイズ


30cm未満のイズカサゴはリリース推奨、静岡県では30cm未満のキンメダイは採捕禁止(要放流)。6kgマダラは「中の上」サイズで、4kgのベニアコウは「小振り」…深海釣りはターゲットのサイズが(エキストラを含めて)総じて大きい。
デカイ!
ほぼ100%置き竿=目感度の釣りだが、的確なロッドをセレクトすればアタリと引きが「手に取る様に」表現されて釣趣も満点。2kgのアカムツ、3kgのキンメダイ、6kgのクロムツ、10kgのベニアコウ…ビッグサイズを手にする事が叶えば、過剰な釣果(数)でなくても、充分に満足できる筈だ。

③喰わせる為の創意工夫


深海釣りは宙層のコマセ釣りほど、厳密な棚を指示される事は無い。どの様な棚取りをして喰わせ、如何に仕掛けを操作し追い喰いさせるか、は個人の技量による部分が大きい。
腕の差が出る!
エサの種類やカット法にも「選択の余地」があり、釣果を左右するケースも多い。
他にも深海バケ(カラーセレクトも含めた)や擬似餌、チモトのアクセサリー、発光体のサイズやカラー、発光パターンなど、随所に創意工夫を凝らす事が出来る。

④未知の海域に廻らすロマン


一本のラインから伝わる情報を竿先に変換し、千尋の海底を「見る」。アタリや抵抗を実際には無い音として「聴く」。浅海の様に豊富な映像を目にする事が困難な深海の釣りは、常に海底の状況をイメージする「想像力」が必要とされる。
可能性への挑戦!
「現実面」でも巨魚や怪魚、魚類学者も垂涎の珍魚との対面、未記録種の可能性など、ロマン溢れる釣りと言えるだろう。


「深海釣り」の定義


沖釣りの世界で「深場釣り」と言えば、キンメダイやアコウダイに代表される深海魚をターゲットとし、中型以上の電動リール使用する「深海釣り」を指すのが一般的。
「深海」とは動物相では大陸棚が終わる水深200m以深、海洋学なら水深2,000m以深の海域を指す言葉。ゆえにこれ以浅、「大陸棚での釣り」は厳密に言えば「深海釣り」ではない事となる。

釣りシーンにおける「深海」の定義(イコール水深)は時代と共に変化してきた。
筆者が「船釣り専門」となった1976年は東京湾口や相模湾で「深海釣り」は「第一次ブーム」として差し支えない大人気を誇り、久里浜周辺、松輪~三崎、小網代や茅ヶ崎、早川港…日曜ともなれば(当時「週休2日制」でなく土曜日は半日、若しくは出勤)各港から「鮨詰め」状態の乗合船が出たもの。当時電動リールを所持する釣師は、言わば特別な存在であり、ブームのメインステージである東京湾口や相模湾ではドラグの無い「胴突リール」を使った手巻き派が圧倒的多数。リールのラインキャパシティにテトロン道糸の強度も相まって、乗合船ではオモリは150号、水深も400mが「限界」だった。
深海釣りの定義(昔)

そんな時代背景も踏まえて船釣りの世界では「遊漁で水深100mを超える水深は『深海釣り』と表現して差し支えない」とされた。当時の船釣りムックではアマダイやキダイなど、水深100m前後の釣りも「深海釣り」として紹介されている。

時は流れて時代は平成。電動リールが広く認知されるのはビシアジやイカ釣りに対応する「PE6号300mモデル」の普及による部分が大きい。これによりマダイや遠征五目、ビシアジなどのコマセ釣りでも「100mライン」が珍しい物でなくなると、この水深を「深海」と呼ぶのがはばかられるようになって来る。更に「PE6号1,000mモデル」を筆頭に、大陸棚以深を攻略する「中型機種」が続々登場。動物相「深海」の入口辺りの水深では「深い」と言うイメージが希薄になり始める。
深海釣りの定義(現在)
この頃、筆者らが使い始めた造語が「中深海」又は「中深場」。水深150~350mラインを指す表現だが、実を言うとそれまで「深海釣りターゲット」とされてきた魚種の大半はこのレンジに納まってしまい、当時のメインターゲットで水深400m以深の「本格的深海」を常棲域とするのは後述「ベニアコウ」を除くと、キンメダイとアコウダイだけになってしまう。その後このレンジではキンキこと標準和名キチジ、深海巨魚アブラボウズの専門狙いが確立されるのだが。

ベニアコウ
水深800~1,000mにアプローチする「ベニアコウ釣り」は、その水深は言うに及ばず、あらゆる意味でスペシャルなターゲットに敬意を表し、深海に「超」の文字を冠して「超深海釣り」と称する。もちろんこれも沖釣りの世界でのみ通用する「筆者思い入れ」の造語に過ぎない。太平洋の最深部はベニアコウ釣場の10倍以上、水深10,000m超なのだから。
それでも現状ベニアコウ以深の海域に「釣りのメインターゲット」足り得る魚種は存在しない。その意味でも「究極」かつ「頂点」として差し支えないハズだ。

次回、各ターゲットや釣法について詳しく解説していく。
ライター紹介
深海釣りの魅力とは

テル岡本(テル オカモト)

昭和34年8月 東京都北区出身 埼玉県川口市在住
深海釣り歴40余年、ライター活動30周年を迎えた「ディープマスター」こと深海釣りの第一人者。各種釣り媒体に執筆、出演。数釣りよりもコンセプトと一尾の価値を重視、記録よりも記憶に残る「次世代の深海釣り」を提唱&実践する。
アルファタックルチーフテスター、ミヤエポックフィールドテスター他、各社テスターを兼任。「次世代深海釣り」を具現化したロッドのプロデュースも手掛ける。
著書に「テル岡本 深海釣り入門」(マガジンマガジン)「実戦!深海釣り」「深海釣りマニュアル」「テル岡本のボトムフィッシング」(週刊テレビ)「楽しい根魚釣り入門」(廣済堂出版)他。趣味は魚体写真収集(釣りはもはや趣味ではない!?)

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