船釣り“あるよね”話

気を付けよう、出掛ける前の「お裾分け」

長谷部 司 2016.05.02
指4本のサイズがトップで80本ほどと、数型ともに絶好調の釣果が出ていた駿河湾の夜タチウオ。
そんな釣果情報に思いっきり興奮してしまった私は、「このチャンスを逃す手はない!」と、すぐさま船宿に電話を入れ、その翌日、意気揚々と出かけたのだが……。

「タチウオは我が家を通り過ぎ……」

乗船前から大船に乗った気になっていた私は、「こんなに釣れたら食べきれないな……」と捕らぬタヌキの何とやらで、よせばいいのに、ご近所さんへお裾分けの約束までしてきていた。
ご近所さんのもとへと旅立

当日は海も穏やかで絶好のタチウオ日和。ポイントに着いて日も暮れ、いよいよ本番となったのだが、期待に反してタチウオのアタリは遠い。船長も「昨日は今頃もう入れ食いだったのになぁ」と首をかしげる始末である。まあ、よくある話ではあるのだが……。

結局、大漁を見込んで持参した大型クーラーボックスの中には、小型のタチウオが10本ほどというお寒い状況。前日の80本には遠く及ばない釣果で沖揚がりとなってしまった。

大口を叩いて来たわりにかなりショボい釣果となってしまったが、ここで困ったのは例のお裾分けの約束……。
そんなわけで、一生懸命釣ったタチウオは、我が家の食卓に上ることなく、ご近所さんのもとへと旅立っていったのであった。
最終的に、自分の小遣いをはたいて、よそ様の晩のおかずを調達に行くという、ヒジョーにおバカな結果になってしまったが、釣り師というのは元来、そういう夢見がちな生き物……と思っているのは、私だけではないと信じたい。
ライター紹介
気を付けよう、出掛ける前の「お裾分け」

長谷部 司(ハセベ ツカサ)

東京都在住。船釣り、磯釣り、堤防釣り、渓流釣り、エリアトラウト等々、幅広いジャンルの釣りをこなすマルチアングラー。特に磯のグレ釣りはメーカー主催の全国大会に出場経験のあるほどの腕前。本職はカメラマンで、船釣り、磯釣りなどの雑誌記事の撮影経験も豊富。

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